各国を代表するポケットナイフを並べてみる試み。前編に続き、後編を送りします。
大手メディアサイトの記事やまとめ記事みたいなことをしてみたかったんですが、やってみるとキツかったw
基本的に各国ひとつの製品に絞るはずのところ、絞り切れてないところがあります。
例によって一部の画像とリンクがアフィリエイトになっています。ご容赦。
その4:スイス 『Victorinox ソルジャー CV AL』
VICTORINOX(ビクトリノックス) ソルジャーCVAL 保証書付 0.8201.26 【日本正規品】
あまりに有名で記事に入れるか迷いました。ご存知SAK(スイスアーミーナイフ)です。
ブランドと品質への信頼はもちろん、価格と入手性から考えても、ビクトリノックス製品は国内でポケットナイフを買う際にかなり無難で現実的な選択かと思います(言うまでもない?)。
ビクトリノックスは、1884年のシュヴィーツ州イーバッハにてカール・エルズナーが開いた工房から始まり、1891年にはスイス陸軍にツールナイフを納入しています。
アルミハンドルのソルジャーは現行SAKの基本形ともいえるナイフであり、1962(または61)年から2007年までスイス陸軍で支給されていました。
機能はメインブレード、リーマー(穴あけ)/パンチ、カン切り、マイナスドライバー 3mm、 マイナスドライバー 5mm、せん抜き、ワイヤーストリッパー。
現在国内で手に入れられるソルジャーCV ALは、スイス陸軍モデルの民生用バージョンです。陸軍モデルにはないキーリングが付き、ハンドルの片面に刻印のためのフラットスペースがある他、スイスクロスのデザインが異なっています。 価格は3500円、ブラックは4000円でいずれも税別。ちなみに陸軍モデルもソルジャーALとして限定販売されていました。
2008年以降、スイス陸軍はより大型で、ブレードにライナーロックを採用した新ソルジャー(ソルジャーナイフ)を採用しており、単に「ソルジャー」というときには混同に注意が必要です。
余談になりますが、ウェンガー版ソルジャーはSoldat(フランス語でソルジャー)もしくはStandard issue、あるいはSwiss Army 70と呼ばれているようです。
ビクトリノックスといえばウェンガー、となったのも今は昔。ビクトリノックスによる2005年のウェンガー買収時には製品とブランドは残りましたが、2013年の統合により、ウェンガーナイフは姿を消しました。時計とかバッグのブランドとしては残ってるけど。
その5:フランス 『OPINEL フォルディングナイフ』
OPINEL(オピネル)オピネルステンレス#8
フランスの大衆的刃物、オピネルの折り畳みナイフです。上記画像は標準的大きさ(だと思う)No.8のステンレスを選んでみました。丸みを帯びた温かみのある木製グリップが素朴で魅力的な一本。「フォルディング」の記載は公式サイトに拠りました。
オピネルは1890年にサヴォア地方の鍛冶屋ジョセフ・オピネルが考案したナイフ。基本デザインはそこからあまり変わっていません。
オレンジがかった木製ハンドルは、現行品ではブナ材を使用しています。木製ということもあり、削ったり、彫刻を施したり、あるいはハンドル丸ごと別素材で作り直したりなど、モディファイされることもしばしば。
ハンドルと並んで特徴的なのは、回転するセーフティーリングによる刃のロック機能です。ヴィロブロックと呼ばれ、1955年に開発されたシンプルで効果的な仕組みでした。2000年には刃を閉じた状態でもロックがかけられるように改良されています。
通常モデルは大きさ別にNo.1からNo.13まで存在し、現在国内正規で単品で買えるのはNo.6からNo.12
No.8の現行国内定価は炭素鋼版で2200円、ステンレスで2600円です(どちらも税別)。まだ手頃だけど、十数年前は炭素鋼版を1000円くらいで買ったっけ。 刃の長さは8.5センチで、一つ大きいNo.9になると9センチ、1つ下のNo.7で8センチとなります。この辺が扱いやすく、持ち運びしやすいサイズですかね。
フランスの他の伝統的ナイフとして、Douk-Doukナイフがあります。M. C. Cognet cutleryによる製品で、1929年に誕生。オセアニアの植民地で売る製品だったようです。 肥後守に似ていますが、ロック機構にスリップジョイントを採用している分、構造は少々複雑。日本では入手性に難があり、オピネルの方がずっと有名なので次点つうことで。
同様にフランスの刃物産地ライヨール(ラギオール)の名を冠したポケットナイフも有名ですが、「ライヨール」の呼称がメーカー名や商標ではないこともあり、特定メーカーの特定製品に絞れませんでした。
その6:ドイツ 『Mercator K55K』
とりは通称キャットナイフ、ドイツのメルカトルK55Kです。国内ではマイナーながら、100年以上の歴史を持つポケットナイフです。画像はこれのみインスタから埋め込まさせてもらっています。いつかアマゾンに差し替えるかも。
残念なことに、日本での入手性は悪いです。国内のAmazonにあるものは、今のところ適正価格とはいえません。国内Amazonの製品ページを見たい方は“Black Cat mercator”で検索してみてくだせえ(画像荒いよ)。ちなみに現行価格は34,00EURで、現在のレートだと3950円くらい。
メルカトルナイフK55Kは、1856年設立のHeinrich Kaufmann & Söhne, India-Werk社によって、1867年頃から生産されたシンプルなポケットナイフです。
一枚板を折り曲げたグリップは肥後守やDouk-Doukのようなシンプルさですが、ロック機構にはロックバック(センターロックと言えるか)を採用し、刃の固定が可能です。現行品のブレードは炭素鋼とステンレスが選べます。
名称のメルカトル(Mercator)はラテン語で商人(英語で言うTrader)の意味で、ドイツ語にするとKaufmannとなります。 また、K55Kの最初のKは、会社を設立し、デザインも行った可能性のあるKaufmann氏のイニシャル、55は当時の会社のオフィスがあった通りの住所を表し、最後のKはKatze(ドイツ語で猫)を意味します。
Black Catとも呼ばれる他、現在のOtter社の製品ページではMercator 10-426RG Kと表記されています。
Heinrich Kaufmann & Söhne社は1995年に長い歴史に幕を下ろしていますが、現在はやはりドイツのOtter-Messer社がメルカトルナイフの生産を継続しています。このOtter社も1840年頃に始まった歴史ある会社です。
Otter社の現行品にはバリエーションがいくつかあり、猫ロゴのないものや、一回り小さくしてロックをスリップジョイントとしたスモールバージョン 、ハンドルが真鍮または銅のモデル、ブレードをダマスカスにした豪華版も。また、ブレードの他に缶切り、コルクスクリュー、千枚通しを備えたマルチツール版もあります。
アメリカでは第二次大戦後、ヨーロッパからの帰還兵が持ち帰ったことで広く知られるようになりました。しかし、ドイツ軍がこのナイフを正式装備として支給していた証拠はなく、多くが自弁品だった可能性があるようです。
日本の関、英国のシェフィールドと並び称される刃物の町といえばドイツのゾーリンゲン。メルカトルナイフは現在もこの都市で生産されており、Otter社のロゴは、ゾーリンゲンのあるノルトライン=ヴェストファーレン州の川のカワウソです。真鍮、銅ハンドルバージョンには、猫ではなくこのカワウソロゴが刻印されています。
Douk-Doukナイフ共々アメリカで再注目されたりしているので、国内でも手に入りやすくなることを願いましょう。
以上、『日・米・欧 今でも買えちゃう伝統のポケットナイフ6選』でした。ご覧くださり、ありがとうございました。
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