少々ご無沙汰してしまいました。サボっていたわけではなく、記事にしたいなあと思うような新製品がなかっただけでございます。
なんにもないのも寂しいので、今回は世界のトラディショナルなポケットナイフ(フォールディングナイフ)を各国ひとつに絞って簡単にまとめてみました。好きな方からしてみれば、なんてことない定番品の数々ですが、暇つぶしにでもなれば幸い。(後編はこちら)
モノによっては国内入手が難しいものもありますが(すんません)、すべて現役の製品です。
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その1:日本 『肥後守』
永尾駒製作所:昔なつかしいナイフ 肥後の守 青紙割り込み 中
100年以上の歴史を持つ日本のポケットナイフ、肥後守(ひごのかみ)。プレス加工のハンドル、刃の峰についた「チキリ」が特徴です。刃の材質にはたいていSK材(炭素工具鋼)が使用されています。開刃した際は、チキリに親指を当てることで刃を固定します。ロック機構のない単純構造は、折り畳みナイフの最もシンプルな形ですね。
日本の刃物生産地というと、岐阜県関市が内外に有名ですが、肥後守の発祥は兵庫県三木市。原型は九州から同県に入ってきたナイフ(詳細不明)のようです。
生産は1890年代から始まったといわれ、商標登録は1909年~1910年にされています。現在は製造業者の減少により、「肥後守」銘を正式に使用できるのは、兵庫の永尾駒製作所のみ。ただし、同一形状のナイフは多く存在し、それらの一般名詞としても「肥後守」が使われます。
近年再注目され、ホームセンターの工具売り場などでも、数百~千数百円ほどのものが売られています。
また、同型品を含め、大きさ、材質に多くのバリエーションがあり、鋼材によっては数千~数万円のものも。
その2:アメリカ 『BUCK 110フォールディングハンター』
BUCK (バック) フォールディングハンター 110 with レザー シース
多くのナイフメーカー・ブランドを抱えるアメリカ。中でもロック付折り畳みナイフのアイコンともいえる110、通称ワンテンを世に送り出したバックの存在感は今なお大きいものです。
110は1964年に発売された、ロックバック方式のロック機構を持つフォールディングナイフで、木製(Dymondwoodという積層材)グリップに真鍮のボルスター、420HCステンレスのクリップポイントブレードが標準仕様。発売当時、高い信頼性を持つ折り畳みスポーツナイフとして人気を博しました。ちなみに鋼材は440Cや425Mだった時期があるようです。
真鍮のボディはかなり重く(205グラム)、最近の製品と比べるとバランスは良いとは言えません。 しかし、不変のデザインは今も魅力を放っています。
現在もアメリカ製で、レザーケースが付いて定価80ドル。国内でも並行品が六千円台~一万円程度で売られています。
開刃時の全長は約22センチあり、でか過ぎると感じる方には、ショートバージョンの112レンジャー(約18.5センチ) があります。また、それぞれにフィンガーグルーブとしてグリップを波打たせたバージョンもあります。
その3:イギリス 『シェフィールド ブリティッシュアーミーナイフ』
Gen British Army Clasp Knife
英国の刃物産地といったらイングランド中部の都市シェフィールドです。ここで生産されるステンレスのアーミーナイフは非常に有名です。鋭い先端がないシープフットのメインブレードや、ロープのよりをほどく際などに使用されるマーリンスパイクには、セーラーナイフの面影もあります。
機能はナイフ、スパイク、缶切りに加え、ハンドルの一部がそのままマイナスドライバーとなっています。また、ハンドル下部にランヤードを通すシャックルが付いています。
現在は英国EGGINTONグループの下で生産されており、同社サイトを見ると、傘下のJoseph Rodgersブランドのもの、または単にSheffield製と刻印されたものが販売されています。また、同サイトのカタログにないモデルもあり、他にもシェフィールド内に生産者がいるのかもしれません。
他の仕様として、スパイクにロックが有るもの、スパイク自体を廃したもの、スパイクも缶切りもなしの一刀モデル、スパイクを廃して刃の固定をスリップジョイントからロックバックにしたもの、などがあります。
上の画像のものはスパイクにロックがあり、黄色いランヤード付き。EGGINTONのサイトには載っていません。
スイスアーミーナイフはみんな持ってるし、なんか違うのがいい、というときの選択肢になり得ますが、現在、国内での入手性は低く、価格は高めなのがネックです。でも無骨でかっこいいよね~(主観)。
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