三菱鉛筆による買収でも話題の独・LAMY(ラミー)ですが、突如発売したインクの色でも騒動が巻き起こっていました。
ことの発端は、万年筆用ボトルインク「T 52」のインクカラーラインナップに、今年に入って「dark lilac(ダークライラック)」(※2024年4月米国サイトから製品情報が消えていたため、独サイトへのリンクに差し替えました)が追加されたことです。
もともと「dark lilac」インクは、2016年に「サファリ」限定色(日本では「ライラック」表記)に対応するインクとして発売された限定カラーでした。このカラーはインク好きの間でかなり人気があり、300ドル以上のプレミア価格で取り引きされたこともあるようです。
そのため、「dark lilac」の復活は万年筆・インク愛好家のコミュニティにとって喜ばしいことにも思えます。しかし、話題性にも関わらず公式からの事前アナウンスがなく、2016年版の再販なのか、仕様の違う新色なのか、限定品なのかといった詳細が不明確でした。そして2016年版と2024年版が比較されると、両者が異なるものであることが判明します。こうしたことから、実際にはコミュニティに困惑や失望が広がりました
加えて、2024年の限定色インク「violet blackberry」も「dark lilac」に似ており、これがそもそも2016年版「dark lilac」のセルフオマージュと解釈されていたことも混乱に拍車をかけていました。これら一連の出来事は、ニューヨーク・タイムズで報道されるに至ります。
万年筆関連のネタ画像やニュースを上げる人気インスタアカウントで、この件に関して調査を行っていたfountainpenmemesは、ラミーとのメールで、2024年版「dark lilac」が限定品ではなく通常品であることを確認。さらに、ラミーのヨーロッパセールスディレクターであるGordon Thieme氏とのやり取りの中で、同社が愛好家たちに誤解を生じさせる意図はなかったこと、「dark lilac」にこれほど人気があることを把握していなかったことなどを明らかにしています。
ラミーは公式インスタグラムアカウント lamy_globalにて、ハムスターのミーム画像を交えつつ、騒動について言及、ファンの理解と公平性に感謝するとともに、こうした混乱がもう起こらないことを確約しました(上記インスタ画像)。別の投稿では、2016年版と2024年版が違うものになった理由として、EUの規制により特定の顔料が手に入らなくなったことを上げています(インクくん自身の独白)。また、上述のニューヨーク・タイムズの記事内では、"新しいLilacには別の名前をつけるべきだった" とコメントしています。
というわけで、事態は緩やかに収束したようです。今回の件は愛好家たちの真摯な情熱とインク沼のヤバさが(ラミー含め)世間に知れ渡る出来事となったやもしれません。ちなみに2024年3月15日現在、ラミー日本公式オンラインショップにT 52 dark lilacの姿はありません。
↓愛好家 Manda氏(hellolovely)による「dark lilac」2016年版、2024年版、「violet blackberry」の各インク色の比較。"Stilo e Stile"とは、2024年版dark lilacの存在を(おそらく)最初に知らしめたネットショップです。→[商品ページ]
[The New York Times(Intrigue, Ink and Drama Grip the Fountain Pen Community)]※出来事の経緯、コミュニティの反応やラミーの対応などを細かく知ることができます
[LAMY(ドイツ)(T 52 Ink dark lilac)]
※T 53 クリスタルインク ベリルが表示される場合がありますが、dark lilacとは異なる色と思われます。